今回は凄いディレイ/テープエコーを手に入れてしまったので、是非みなさんに使用感をお届けできればと思います。
Strymonのテープエコーシミュレートディレイ”El Capistan”のレビューです!
最初に軽くテープエコー、アナログディレイ、デジタルディレイの違いや歴史について解説するので、面倒な方はEl Capistanのレビューまで読み飛ばしちゃってください〜
目次
そもそもテープエコーって?
テープエコーとは、カセットテープの内部に使用されている磁気テープによって原音を録音・再生させることでやまびこ効果を得るエフェクトです。
所謂ディレイです。
代表的なモデルはRolnad社のSpace Echo RE201やMaestro社のEchoplex
使用するテープのすり減りやよれ具合によって、原音のピッチが変化したりエフェクト音が著しく劣化します。(これがテープエコー独特のサウンドになります!)
これにより高音が丸くなった暖かみのあるサウンドが得られます。
しかしこのテープエコー、持ち運びやお手入れが非常に面倒でした。(しかも高価!)
デカイ・重い・値段が高いの三重苦、、、
テープについても狙った劣化具合に留めておくことが難しいため、お金持ちのミュージシャンしかまともに使えない状況でした。
そこで登場したのがアナログディレイです。
BOSSの名機DM-2によって瞬く間に世界中にコンパクトサイズのディレイが広がりました。
アナログディレイはBBD方式というものを採用していて、音をバケツリレーのように繰り返し再生することでやまびこ効果を発生させます。
その際に原音が劣化するので、テープエコーと似たような音が得られます。
その後に登場したデジタルディレイはサンプリング方式で音を繰り返すため、原音が劣化しません。
(DD-3のような古い機種では微妙に劣化しますが) クリアなディレイサウンドを得るならデジタルディレイ一択ですね。
まとめると
- テープの劣化によるピッチの揺れや音の暖かみを求めるならテープエコー
- コンパクトサイズのペダルで暖かみのあるサウンドを求めるならアナログディレイ
- 劣化の無いクリアなサウンドを求めるならデジタルディレイ
といった感じでしょうか。
Strymon El Capistan
El Capistanはテープエコーの音をモデリングしたデジタルディレイに分類されます。
一言で表現すると、これは本物を超えた完璧なテープエコーです。
エフェクト音はとても自然で、完全にオケに馴染みます。
初めて音を鳴らしたときに高音質すぎて笑ってしまったのを覚えています。
Strymonの空間系は原音をデジタル変換せずに処理し、デジタル処理されたエフェクト音を後から足しているため、原音のニュアンスが損なわれることがありません。
どうしてもAD/DA変換を行うと原音は変わってしまいますからね、、、
テープの劣化具合をコントロール
このペダルはテープのすり減りやヨレ具合をシミュレートしており、さらにそれをコントロールできます。
下段のTAPE AGE(高音の劣化)とWOW&FLUTTER(ピッチモジュレーション)を右に回すことで、エフェクト音が高音劣化しまくり・ピッチ揺れまくりの超ビンテージテープエコーを再現できます。
テープエコーのマルチヘッドを再現
El Capistanでは3種類のヘッド(ディレイ音の再生方式)がシミュレートされています。
- fixed:固定式テープヘッド
- multi:複数ヘッド
- single:スライド式テープヘッド
fixedは固定ヘッド(単体)のシミュレートで、原音が等間隔で返ってくる一般的なディレイと同じです。
MODEのA/B/Cはそれぞれショート(16分音符)/ミディアム(付点8分音符)/ロングディレイ(4分音符)に割り当てられおり、TIMEノブでディレイタイムを調節します。
「multi:複数ヘッド方式」では 原音に対してディレイ音が「タッタッタッ…」のように等間隔で鳴るのではなく、
「タタタッタタッ…」や「タッタタッタタ…」とスキップするようにディレイ音が返ってきます。
MODEのA/B/Cで使用する再生ヘッドの組み合わせを決めます。
最後のsingleはテープ・スピードを固定し、録音ヘッドから再生ヘッドまでの距離を調節することによって、ディレイ・タイムを決めるモードです。
また、singleでMODEをCに設定すると、ルーパーとしても使用できます。
豊富な入出力端子
今時のディレイでは当たり前のステレオ入出力にも対応しています。
またエクスプレッションペダルを接続すれば任意のつまみをコントロールが可能。
ちなみにStrymonのエフェクターはバッファの質にも非常に定評があります。(音が自然な範囲で太くなったような気がするんですよ)
もし気に入らなければ設定でトゥルーバイパスにもできるので、お使いの環境に合わせて変更しましょう。
専用のアダプターが付属するので駆動に関してはご心配なく。
発振・タップテンポ
REPEATSノブを右に回すと発振しますが、発振音はあまり派手ではありませんね。
発振で遊びたいなら別のアナログディレイを使いましょう。
もちろんタップテンポにも対応しており、左下のTAPスイッチを踏み続けるとエフェクト音が永遠にフィードバックし続けます。
こちらはライブでちょっとした小技に使えるのでオススメです。
実はリバーブもついてる
このEl Capistan、ディレイなのに実はリバーブもついています。
TAPスイッチとBYPASSスイッチを数秒間同時押しをして裏モードを起動すると、各ツマミが別のコントロール部分に切り替わり、 RolandのSpace Echoに内臓されていたスプリングリバーブをシミュレートしたサウンドを得ることができます。
それ以外にもエフェクト音の低音、テープのお手入れ具合、±3dbのブースト/カットを設定することができます。
多機能すぎでしょう、、、、
まとめ
ただのテープエコーのシミュレートだけではなく、現代的な機能を詰め込んだ万能ペダルと言えますね。
実機のテープエコーの良さを完全に再現しつつ、デジタルディレイの利便性を両立させていてさすがStrymonだと感心しまくりです。
場面を選ばずに使える汎用性を持つEl Capistan、皆さまも一度試奏してみてはいかがでしょうか。