DTMをやっている方の多くは、モニタースピーカーを持っていると思います。
そのスピーカーですが、正しく設置できていますか?
もちろん、住宅事情などがありますから、自宅でレコーディングスタジオと
同じような環境を実現しようとしても、限界があります。
ホームスタジオ作りは妥協との戦いです。
それでも、少額の投資やちょっとした工夫で、鳴りを改善することはできますよ。
しっかりセッティングしていけば、スピーカーがワンランクアップしたかのような効果を
得られます。
注意するべきポイントを一緒に見ていきましょう。
目次
スピーカー設置の基本的なセオリー
オーディオの世界というのは実に複雑で、好みの問題もありますし、決まった正解がない場合も多いです。
ここでは一般的によく言われているスピーカー設置のセオリーを紹介します。
スピーカーを置く高さと耳の位置
ツイーターとウーハーの中間を指していますが、ここに耳の位置が来るのが理想とされています。
ツイーターの高さに来るのが良いという人もいますね。
好みによって調節しましょう。
高さの調節には、後述するスピーカースタンドを使うと便利ですし、音質的にも有利です。
厄介な「定在波」をコントロールしよう
モニタースピーカーといえば「フラットな特性」を目指して作られた製品がほとんどです。
ところがそんなスピーカーを普通の部屋に置いて鳴らすと、スネアのアタック音が強調されたり、妙にボーカルのハイがキツかったり、ギターの低音が膨らんだり…と、必ずしもフラットな特性を発揮できるとは限りません。
これらは部屋が持っている「定在波」の影響を受けることで発生してしまいます。
その部屋が持っている音響的な特性ですね。
これを軽減するために「奇数分割法」があります。
奇数分割法
めちゃめちゃざっくり言うと「スピーカーは部屋の幅÷奇数の位置に置け!」です。
どういうことでしょうか。下の図を御覧ください。
左右の青い四角形がスピーカーです。
壁とスピーカーとの距離、スピーカー間の距離が、全て「部屋の一辺÷奇数」になっていることがわかると思います。
辺を割る数字は奇数なら何でも構いません。
こうすることで定在波の影響を軽減することができます。
もちろんゼロにすることはできませんが「こういう方法がある」というのを知っておいてください。
先述したスピーカーの高さも「部屋の高さ÷奇数」で求められますよ。
壁との距離をとろう
壁との距離が近いと反響してしまい、音がぼやけてしまいます。
特に低音は音が周りやすく、壁とスピーカーが近いとぼやっとしてしまいます。
なるべく壁と距離をとるようにしましょう。
距離が取れないときは「吸音材」
とは言っても、驚異の人工密度を誇るこの日本列島。
壁とスピーカーの距離をとれと言われても、無理なこともありますよね。
そんなときは、「吸音材」を使ってみるのも手です。
値が張る製品も多いですし、後述するインシュレーターなどよりも優先順位は低めでいいと思いますが音の反響を抑えてくれます。
筆者は壁とスピーカー後方の距離を30cmほどとったうえで、後方の壁に吸音材を貼っています。
他にも音の反射する点に貼っていくと効果的です。
リスナーとスピーカーは「三角関係」が理想!?
恋の三角関係、できれば避けたいですよねえ。私はもうこりごりです。
ところが、リスナーとスピーカーにおいては三角関係が理想とされているんです。
どういうことでしょうか?下の図を御覧ください。
つまり、自分とスピーカーの位置関係が正三角形になるようにすればいいんですね。
そこまで難しい話ではありません。
ただ、定在波を避けつつ、左右の間が開きすぎないように音を聞きながら微調整、角度も微調整…
というのはなかなか骨の折れる作業ですし、そもそもスペースがないことも多いですよね。
筆者は分度器や定規を使って追い込むのが好きですが、定在波に関してはある程度妥協しています。
床や机に直置きはNG!
床や机にスピーカーを直接置いている皆さん、今すぐ見直しましょう!
机や床と共振して余計な音が出てしまっています。
そうすると、音が濁ったりして正しいモニタリングが困難になるんです。
正しい音を聞くために、スピーカースタンドやインシュレーターを使いましょう。
スピーカースタンドとは?
その名の通り、スピーカーを置く台座です。専用のものが販売されているほか、
コンクリートブロックやレンガを使う人もいます。
スピーカーからの振動を抑えて整えるイメージです。
筆者は近所のホームセンターでコンクリートブロックを買いました。
専用品よりもかなり安価に仕上がりますが、見た目はあまり良くないかもしれませんね。
これに加えて、インシュレーターを併用しています。
インシュレーターとは?
皆さん、インシュレーターというものをご存知でしょうか。
スピーカーと設置面の間にインシュレーターを挟むことで、振動を下に伝えにくくすることができます。
こうして無駄な振動が減ると、こもった低音がすっきりしたり、音の定位がわかりやすくなったり、輪郭がはっきりしたりします。
材料としては木材や金属がよく使われるようですね。
「十円玉」は避けよう
インターネットでインシュレーターについて調べると、
専用のものを使わずに十円玉で代用している方を見かけます。
もちろん効果がないわけではないですし、ないよりはマシです。
しかしながら、専用品と比べると大きく性能が劣ります。
専用品とはいえ、三千円もせずに買えますよ。
筆者は実際に「十円玉インシュレーター」からこのオーディオテクニカAT6098に乗り換えたのですが、まさに雲泥の差です。
籠もって濁っていた低音はキュっとしまり、全体的な音の定位もはっきりしました。
特に低音では劇的な変化があって、
ベースが「見える」という感覚を得ることができました。
また、イメージが少し難しいかもしれませんが「音のスピード感」にメリハリがつき、より奥行きを感じることができるようになりました。
ちょっと表現がオカルトっぽいですかね?笑
そもそも、AT6098を使うまでは「音が籠もって濁っている」「定位がわかりにくい」という自覚すらなかったのです。
そんな状態でミキシングやマスタリングをするのは、恐ろしいことですよね。
三千円にも満たない投資でここまで変わるのか!と正直驚いています。
そして、いつものように音楽を聴くときも、細部まで音が聴こえるので楽しみが倍増しました。
ちょっと推しすぎと思われるかもしれませんが、インシュレーター断然おすすめです!
まとめ
モニタースピーカーの正しいセッティング方法について見てきました。
たくさんポイントがありましたが、結局のところホームスタジオ作りは妥協との戦いです。
それでもスピーカーの位置調節やインシュレーターの導入など、少ない労力・投資で改善できることも多いです。
自分で試行錯誤しながらモニタリング環境を作っていくと、いつの間にか自分の耳も育っていることを実感できます。
できることからコツコツと、理想のモニタリング環境に近づけていきましょう!